留学先でフィリピンとシンガポールで迷っています。
どちらも利点・欠点があるため何を重視するかです。項目ごとに比較しましょう。
フィリピン留学は学習塾で夏休み等に行われる缶詰の「合宿講習」のイメージ、シンガポールを含む世界の一般的な留学は毎日学校に通学します。日本で通っていた学校と同じイメージです。
留学先としてのフィリピン(セブ等)・シンガポール、ここでは皆さんの関心が高く留学先選びのポイントになる「留学費用」「英語・語学学校」「治安・安全」「衛生・医療」の4つで比較します。
留学費用 : 実はあまり変わりません
予算重視なら物価が安いフィリピン・セブが圧倒的に安く留学できる…と思いがちですが総額のみで比べると実はあまり違いはありません。ほぼ同じまたはシンガポールがやや高くなる程度です。
不思議に思われるかもしれませんが大きな違いは学校の授業スタイルです。フィリピンは1対1のマンツーマンが基本ですがシンガポールはレベル別のグループレッスンが基本です。もしシンガポールでフィリピンと同じマンツーマンレッスンで学ぶなら一気にシンガポールの費用は高くなります。
詳しくは以下をご覧ください。
シンガポール 留学/ワーホリの予算
シンガポール留学予算のご案内です。
英語の立ち位置
シンガポール
アジアの中で唯一「日常的」「公的」に英語が使われているのがシンガポールです。たとえばシンガポールの学校は小学校から大学まで授業は英語でおこなわれビジネスやお役所で公的に使用する言語もすべて英語です。多民族国家シンガポールの公用語は英語・中国語・マレー語・タミル語、英語は全住民の共通語の位置づけです。
フィリピン
フィリピンでは英語はあくまでも日本と同じ外国語ですので、都会や観光地、ホテル等、外国人が多い場所を除くと通じない・通じにくいこともあります。
語学学校の授業形態
語学学校はその授業形態がシンガポールとフィリピンで大きく違います。
フィリピン
フィリピン留学の最大の特徴は安い人件費だからこそ実現できる「1対1のマンツーマンレッスン」中心の授業です。一方、シンガポールの人件費は日本と同程度かそれ以上のため授業スタイルも欧米の語学学校と同じ「レベル別に分かれたグループレッスン」です。
マンツーマンレッスンの良さは自分の苦手な分野に絞って学べることですが、教師の多くは日本語が出来ないため自分の希望を伝える英語力が必要です。そのためフィリピン留学を最も有効活用できるのは基本的な文法はマスターしているTOEICで750点前後以上の方で、ある程度は英語での意思疎通が出来て自分の弱い部分・伸ばしたい部分がはっきりとしている方です。
英語が苦手で基礎からもう一度やり直したいという方は、いきなりマンツーマンレッスンを受講しても、上手く希望を伝えられず、その良さを十分に生かしきれない可能性があります。またフィリピンの教師は必ずしも英語教師としての教育を受けているとは限りませんので(各学校独自のトレーニングは受けています)、英語の教授法という点では教師による差が出やすいのではないかと思います。
フィリピンは人件費が安いため授業時間も長いところが多いですが、授業が長くて消化しきれず授業をこなすだけで精一杯になってしまう方もいらっしゃいます。試験対策など具体的な目標を定め、それに向かって短期決戦で学ぶなら良い方法だとは思います。まさに受験対策の合宿です。
しかし学んだことをしっかり定着させるには予習・復習大切です。また学校以外の場で実際に英語を使うことが使えるようになるには欠かせません。フィリピンは治安の問題で自由に出歩くことが難しく、学んだ英語を実践で試す機会が少ない欠点はあると思います。
海外で英語を学ぶ最大の魅力は学校以外でも英語を使う環境にあることです。しかしフィリピンは学校内・寮内で過ごす時間が圧倒的に多いため、学校以外で英語を使う環境を失いがちです。
シンガポール
一方、シンガポールの語学学校はグループレッスンになりますが何らかの認められた英語教師資格(TESOL等)を持つ英語教師が担当するため基礎からしっかりと学ぶことが出来ます。
グループレッスンは主にアジア各国からの留学生と一緒に学びます。そのためクラスメイトを通しての国際交流も魅力的です。授業後に食事に出かけたり、週末に遊びに出かけたり、連休にはクラスメイトの国へ旅行に出かけたり、様々な形での国際交流が可能です。
英会話力を伸ばすにはフィリピンのマンツーマンㇾッスンが良いのでは?という方もいると思います。グループレッスンではどうしても会話力を伸ばしにくい欠点はありますが、それを補うためにシンガポール滞在中もオンライン英会話を受講するのをお勧めしています。
オンライン英会話は毎月1万円程度で毎日のマンツーマンレッスンを受講できます。すぐに英語を実践できるシンガポールでオンライン英会話を利用することで日本で学ぶのに比べて上達も期待できます。
治安・安全
フィリピン
フィリピンはアジアの中でも治安がかなり悪い国の1つです。ショッピングモールに銃の販売店もある銃社会の国でもあります。また麻薬類もかなり広がっています。学校や寮内は安全でも一歩外に出たらひったくりなどには常に注意が必要で立ち入ってはいけない地域、夜は危険な地域もあります。
フィリピン全体・マニラ首都圏の治安・テロ・衛生状況は「フィリピンにおける安全対策(2024年6月)|在フィリピン日本国大使館」で詳しく説明しています。フィリピン留学を検討中の方はぜひご覧ください。
主な留学先 | 10万人あたりの殺人事件発生率 |
---|---|
シンガポール | 0.12 |
日本 | 0.23 |
オーストラリア | 0.83 |
イギリス | 1.13 |
カナダ | 2.27 |
フィリピン | 4.32 |
アメリカ | 6.38 |
セブは治安が良い…という謳い文句も聞きますが、それは治安の悪いフィリピン全体で比較した時の話だと思ってください。事実、フィリピンの語学学校は夜間の外出禁止などの行動制限を設けているところが多いですがシンガポールはそのような制限はありません。
セブの治安・テロ・衛生状況は「セブにおける安全対策(2024年6月)|在セブ日本国総領事館」で細かく説明しています。セブ留学を検討中の方はぜひご覧ください。
テロの問題も常に抱えています。フィリピン南部にはイスラム国とも連携するイスラム過激派テロ組織「アブサヤフ」が長年テロ活動を続けており、外国人の身代金目的誘拐(斬首された被害者もいやす)や自爆テロが毎年のように起きています。2017年にはセブ島の沖合にあり観光客や留学生も日帰りツアーでよく訪れるボホール島にアブサヤフの兵士達が上陸、フィリピン軍との戦闘になった事件がありました。アブサヤフに関しては以下の記事を参照してください。
シンガポール
シンガポールは治安がとても良い国です。肌感覚では日本以上に治安が良い印象です。
日本と同レベルの注意を守っていれば危険な目に合うことはまずありません。立ち入ってはいけない場所もなく、過去に留学生が被害にあったケースは人混みでのスリ程度です。
治安の良さは安全を重視する日本の高校の海外修学旅行先の統計にも現れています。公益財団法人全国修学旅行研究協会の統計資料によると、海外修学旅行先としてシンガポールは生徒数ベース・実施校ベース共に2位(1位は台湾)の実績があります。
シンガポールの治安・テロ状況は「安全の手引き(2023年2月)|在シンガポール日本国大使館」で細かく説明しています。
こちらも参考にしてください。外務省海外安全ホームページ: シンガポール フィリピン
多民族国家であり、更に住民の3分の1が外国人、日本人も3万人以上住んでいます。その為、外国人が生活しやすく、日本に近い感覚で生活しながら、街を歩き、英語を実践で使い、ダイバーシティ(多様性)・グローバルを体感できるのがシンガポールのお勧めなポイントです。
衛生・医療
コロナ禍での対応
フィリピンではコロナ禍で多くの日本人留学生や現地で働く日本人が感染リスクや仕事の減少で帰国せざるを得ませんでした。一方、シンガポールではお手伝いさせて頂いていた日本人留学生は誰1人として帰国せず(休学中の大学からも帰国要請無し)、現地で働く日本人駐在員やその家族も特別な事情がない限りシンガポールに残りました。医療崩壊もなく政府がリーダーシップをとって臨機応変に対応、情報公開も行っていたため安心感はありました。
シンガポール
熱帯にありながらシンガポールは周辺諸国に比べ衛生状態が良く、例えば水道水はWHOの基準で直接飲んでも問題ありません。また病院も充実しており、周辺諸国に住む富裕層や外国人はシンガポールで大病や大けがの治療を受けるのも一般的です。
また日本人医師や歯科医が働く日本人専用クリニックも複数あり、いざという時には日本人医師から診察を受けられます。クリニック内に入ればそこは日本と同じ環境、受付から診察、薬を貰うのも全て日本語、支払いは海外旅行保険のキャッシュレスです。
フィリピン
東南アジアでコロナ禍で医療崩壊が起きた国はフィリピン・インドネシア、東南アジアの中でもコロナ感染者数がズバ抜けて多かった国です。亡くなった方の中に医師・看護師などの医療関係者が多いのも特徴です。
他者の意見
H.I.S.社員が選ぶ「行きたい/行きたくない」旅行ツアー。人気リゾート地がまさかのワースト(日刊SPA!)
「日本人に人気のアジアのビーチリゾートでは、群を抜いて治安が悪いです」
周囲の東南アジア旅行歴が長い旅慣れた日本人からも同様の意見をよく聞きます。東南アジアの人気ビーチリゾートで有名なのはバリやプーケット。こうしたリゾート地に比べ「セブは現地の雰囲気が違う」という声をよく聞きます。
1年に地球20周分、世界中を飛び回るビジネスマンの方が危険な国3位にフィリピンを挙げています。
まとめ
シンガポール留学もフィリピン留学もそれぞれ違う良さがあります。最近はフィリピン留学を経験したことがある留学生も増えてきました。皆さんにフィリピン留学の感想を尋ねると、やはり良い点は予算の安さ、悪い点は生活環境・衛生状態だと答える方がほとんどです。
どちらが良いかはご自身が留学で何を重視されるかで異なります。自分にとって最優先するのは何か? それぞれの良い点・良くない点を比較して、どちらに留学するかを決めて頂ければと思います。